TOTOのショールーム

海外デザイナーや研究者達が来日してインタビューや観察を行う際、IDEOであれば、殆どの来日者がTOTOのショールームの見学に行く。日本のサービスや、きめ細かいデザインなどが見れる格好な場所だからだ。アメリカではまだ一般家庭で電気便座は多くないので、女性デザイナーや研究者が来ると、感激される。何を優先的にするかは、文化で違ってくるので、TOTOで見るものは日本人にとって優先順位の高いものだ。 新宿のショールームを見ていて、その優先順位について三つ気が付いた。一つ目はキッチンのデザインで、オーブンの存在感の薄さ。オーブンがどんどん取り入れられているのは都心だけではないと思うが、少なくともABCクッキングセンターを見ると、オーブン料理は当たり前に取り入れられている。パンやお菓子作りのお料理教室は多い。それなのに、未だにオーブンはおまけみたいに扱われている。 気が付いたことの二つ目は、空間のど真ん中に、360度からアクセスでき、何人もの人達が囲って一緒に料理に参加しながら食事できるカウンター。日本でも、家族全員が一緒に作ることが家族としての楽しい経験を共有し、コミュニケーションを自然に取る場所がキッチンになってきているのだと思う。テレビ、映画はインタラクティブではない。でも料理は、話すだけではなく、身体を動かして一緒に何かを作る。それを内臓でも一緒に感じる。 三つ目に気が付いたことは、キッチンの理解、工夫に対してお風呂場の理解と工夫にはまだ可能性が沢山あるという事。一般の家では、まだ乾燥機に入れて乾かすということに抵抗を持っている主婦は多い。でもどういうわけか、脱衣室でハンガーに選択物をかけておき、除湿機を使って乾かすことはOKの様子だ。キッチンが家の中心で皆が集まれる場になっているように、お風呂場は自分も、自分の服もケアする場所なのだと思う。 最近あまりショールームめぐりをしていなかった。また意識的にやろう。

デザイン手法:ユーザー観察で重要なこと、その2

今までユーザー観察を手伝ったり、一緒にさせて頂いて、観察者の洞察力・ひらめきが凄い!と感動した瞬間が多くあった。ユーザー観察は、もちろんそのような洞察を得るためのもの。ただ、それは重要でありながらも仕事のごく一部であり、その洞察をを分かりやすくレポートに落とし込むこと、そして最も重要なことは、それらを実際にモノやカタチに落とし込むということをお忘れてはならない。 話をユーザー観察中の洞察・ひらめきに戻そう。凄い洞察力やひらめきは、残念ながら昨今流行っているイノベーション・ワークショップに参加するだけ、または観察手法さえ学べばできるものではない。絵を書くのが上手くなるのと同じで、そもそも才能があるか、又は実際にやることを圧倒的に多く経験するかのどちらかが必要とだ。ただ、大きな希望もある。それは、全く才能が無い人でも、観察をするのが好きで、時間をかけてひたすら数をこなし、実体験を重ねていれば、洞察力が付き、ひらめきが出るようになる。私自身、その才能が無いが観察が好きで経験を重ねることによってできるようになった事例だ。ここではっきりとしておきたいことは、「時間をかけて実体験」と「時間をかけて勉強」は全く別ものだということである。座学の勉強はあくまでも予備知識、予習だ。練習前に勉強し、知識を持つことは有意義だが、実際の仕事となると、座学はほぼ役に立たない。文章、動画、言葉だけでは、あまりにも多くの事が受ける側のイメージに頼ることになるからだ。 ただユーザー観察で経験を積むというのは、実は以外と簡単。今日から1日1回でも、何かを見る時、今まで気にしなかった細部に注目し、何故その細部はそのような形になったのか考えてみることだ。そして、実際に人が訳の分からない使い方をしていても、あれは特別な使い方だからデータは使えない、などと放棄せずに、あるがままを受け入れる。効果的なやり方、効率的なやり方をしていなくても、だ。これを1ヶ月続けると、今まで見えなかったものが見えて来る。3ヶ月続けると、世界が自分が今まで思っていたような場所では無いことに気が付き始める。1年続けると、リサーチャーと呼ばれても良いくらい、洞察力が付くのでは?