学者の友人から「ワークプレイス(組織論)、FM、戦略論、都市計画を統合した内容です」との紹介を受け、たまにはきちんと勉強をしようと思い早速『日本の産業クラスター戦略』を購入した。手ごたえのある内容で、非常に嬉しい。
第6章 空間経済学の観点から見た産業クラスター政策の意義と課題 より
ITは情報を内包している素材を伝達・処理するための手段であるが、それを解釈して利用するのはあくまで豊富な知識を有する人間である。一方、知識創造活動には、多様な知識労働者間のフェース・ツー・フェースの対話を通じての相乗効果により生まれる、「知識外部性」が決定的に重要である。とくに、明確化された「形式知」はITを用いて距離を越えて伝達できるが、明確に表現の難しい「暗黙知」は、日常圏を共用する都市(ないし地域)に、対話を通じて蓄積される。したがって、先端的な知識労働者は、ITを駆使しながらも、高い知識外部性を有する比較的少数の都市に集積していく。そうすると、新たな知と知、知と技の組み合わせを通して、さらに新しい知と技が生まれると同時にいっそう豊かな「暗黙知」がそこに蓄積されていく。つまり、ITの進展とともにますますグローバル化する世界において、ローカルな知識外部性(文化や伝統を含む)を豊かに持つ都市の重要性がいっそう増していく。