塩野米松、『木のいのち 木のこころ:人』
鵤工舎の若い連中だけで塔が建つというのもそういうことだ。道具をちゃんと研いで、言われたとおりに素直に、やっていればいい。それをわかったふりをしたりされるとだめだ。そうすると、勝手にまげてつくるかもわからんし、自分勝手に思いこんで変えてしまうこともあるからね。だから、職人ばかりを集めてやると仕事がばらばらになる。職人というのは腕がいいんだから、はたから見るとまとまるなと思っても、それは違う。みんな俺はこういうふうにやりたいとか、俺はこれだけのことをやりたいとか、というふうになると途中で肝心なことがみんな抜けてしまう。そういう意味では、素直に自分の与えられた仕事をしてくれる鵤工舎のようなしかたのほうがいいものができる。まとまりやすいし、しっかりやる。手を抜かんからね。若い衆も現場に置かれて、自分たちで教わりつつ、言われた通りきちっとやる。それが勉強やからね。同じ程度の職人が集まると、なかなか仕事が・・・うまくいかん。だから鵤工舎でもある程度できるようになったら、出て行かせてるんやないか。
会社の運営で思うふしだ。日本の大企業はバブル崩壊の後若手を採用していない。その成れの果てが現状だ。私の仕事はどうなのだろう?最近まで手を抜いていた。独立して気がついたら、実践を通じて若手と自分の知識と経験を伝えてるようになっていた。これから自分の仕事をレベルアップさせるには、若手を育てていくことなのだろう。