経験経済・トランスフォーメーション経済

Frontiers of the Experience Economy

AUTUMN 2003 • BATTEN BRIEFINGS
A quarterly discussion of innovation, entrepreneurship, and business change

One way to determine what business you’re in is to consider what you charge for: If you charge for raw materials, you’re in commodities; if you charge for physical things, you’re in goods; if you charge for activities you perform on behalf of another, you’re in services; but if you charge for the time people spend with you, then you’re in experiences. Today, consumers seek to spend less time and money on goods and services, but they want to spend more time and money on compelling experiences.

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Eventually, the world will become so saturated with experiences, as it has with goods and services, that yet another form of economic output will emerge: transformations. In a Transformation Economy, businesses will charge not just for experiences but for the demonstrated outcomes based on those experiences. This next step in the progression of economic value will create yet more opportunities for innovation.

先日友人と話していた際、経験経済についての話をしてくれた。私は経験(エクスペリエンス)デザインにここしばらく携わってきたのだが、経験経済という言葉を耳にしたのは初めてかもしれない。話を聞いていると、経験デザインは経験経済のごく一部だということに今更気がついた。そしてとても興奮した。後ほどウェブで経験経済に関して検索すると、1999年に米国にて出版されたPine & Gilmore氏の『The Experience Economy: Work Is Theater & Every Business a Stage』が昨年和訳で出版されていた。上記の記事は2003年に公開されている。

確かに昨今一般的にリスペクトされ知られている企業は何らかの形で経験経済の論理に当てはまると思う。興味深いことは、上記Darden大学のペーパーでは、経験経済の次に来るものはTransformation(形質転換?)経済だと言っている事だ。実際現在周りを見回すと、注目を浴びているものはこの経験に基づき変革を起こす企業だ。分りやすいものであれば、美容や健康関係、教育関係だろう。アマゾン等もこのタイプだと思う。学び、それを実践で生かすことにより自己改革は起きるし、周りも変えることができる。任天堂の「脳を鍛える大人のDSトレーニング」もこのタイプだろう。

ワークプレイス作りに関しての経験・トランフォメーション・ビジネス・モデルとはどういったものなのだろうか?ほとんどのITや家具メーカーは、トランスフォーメーション・ビジネスでなくてはならないと分っていながら、それらを実践できていない。日本ではB2BビジネスとしてITや家具メーカーは総務に売り込む事が目的となり、ユーザーの経験やトランスフォーメーションの部分は別になくても良いというスタンスだからだ。一般的に建設会社や設計デザイン事務所も殆どはユーザーの経験やトランスフォメーションの優先度は低い。

私は独立して以来トランスフォーメーションを目的としたワークプレイス・プロジェクトのみを選び参加させて頂いてきた。だが業界を見ていると、移転や改装が最終結果のプロジェクトである程度の予算がつくと、たちまち改革、変革(トランスフォーメーション)という言葉を振りかざしたメーカーがプロジェクトを取りにやってきて、実際変革を作る仕組みには関わらずにモノの形だけを納めるためにプロジェクトを進めていく。最終的にはトランスフォーメーションには程遠い経験与えるような場が作られ、それはおおむねやむ得ない結果として受け入れられる。ワークプレイス改革は、人から始まり、人で終わる。あの人が言っているのだから、よく分らないけれど一緒にやってやるか、というプロジェクトとどうも納得がいかない、というプロジェクトの成果としての経験レベルアップとトランスフォーメーション度は天と地の差がある。

7 thoughts on “経験経済・トランスフォーメーション経済”

  1. エクスペリエンス・デザインという言葉が気になりました。実は小生はユーザーエクスペリエンスという枠組みで自分の仕事を捉えていて、そういうの視点でユーザ行動の観察とか価値観の変化とか“用”のあり方のデザインを行っています。sudaさんの経験デザインという言葉と、自分の描いているユーザーエクスペリエンスのデザインという言葉が概念として同じかどうか・・考えてしまいました。まぁ、言葉にこだわることもないんですが・・。

    まだPine & Gilmore氏の本も読んでいませんし、経済に関してはかなり大昔にボードリヤールの本を何冊か読んだくらいで、知識はお寒い状況ですが、お話を聞いていて、経済の交換価値が変わりつつあることを問題にされているのかなぁ、と手前勝手な理解をさせていただきました。つまりモノではなく、経験することそのものに価値を見出す、というような。自分を磨くことで自分が一回り大きくなったとか、そういうイリュージョンも含みますが(^^)

    そう考えると、価値のあり方を見るという意味で、sudaさんのおっしゃる経験デザインと私のユーザーエクスペリエンス・デザインは同じことなのかもしれない。
    とまぁ、勝手な納得をした次第です。(^^;)

    失礼しました。(松)

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  2. いつもブログを拝見しております。
    小職は、メーカー系販社にて、大企業向けワークプレイス構築を本業とおいており、そのなかでソリューションを担当しております。

    個人的には、メーカー系でありながら、昔ながら『経験デザイン』を目指して成功事例も増えてきていると認識しています。その中で、そのトラスフォーメーション的な価値を提供できているケースも増えてきました。

    日本の市場では、ワークプレイスではなく、ワークスタイル=BPRのような視点で変革をチャレンジしようという顧客側の気運が低く思います。そこが我々にとってもビジネスチャンスなのですが・・・。

    ここでの先駆者は米国でのIDEO社であるかと考えます。

    ただし、この分野で、ビジネスとして成立しているプレーヤーはあまり存在しないのも事実であります。どれも提供者側の自己満足に終わっているケースがほとんどであるのが、小職の現状認識です。

    いつか、須田さんとのコラボレーションを出来る日を夢見て・・・。

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  3. 松原さん、コメント有難うございます!

    流行言葉は皆そうですが、エクスペリエンス・デザインという言葉の定義はかなりあいまいですね。例えば、グーグルで検索してトップに出てきた「エクスペリエンス・デザイン」が語られているIT関連サイト(http://www.atmarkit.co.jp/fitbiz/serial/xp/01/01.html)では、「エクスペリエンスとは「体験」と訳す向きもあるが、この訳はあまり適切ではない。一言でいえば「これまでになかった体験」と表した方がピンとくる概念である。」とあります。これも突っ込む事ができますが・・・。

    「経済の交換価値が変わりつつあることを問題にされているのかなぁ」との事でしたが、問題というよりも自分にとっての新しいものの見方の発見を共有している、というものかも?自分で書いておきながら、かも?というのも変ですねぇ。

    「自分を磨くことで自分が一回り大きくなったとか、そういうイリュージョンも含みますが」というのもトランスファメーションの一部だと思います。知識的な部分もありますが、フィジカルな例でいうと今流行りのアンチ・エージングとか、プチ整形とか、ダイエットとか。ちょっと今まで着た事の無かった服を色々と試してみて、似合うファッションを選んだり、身のこなし方、姿勢を変える等でも良いのに、シワ、脂肪を何とかすることが自分を変えることなんだ!という思い込みやイリュージョンもありますね。

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  4. ヒデクニさん、コメント有難うございます!

    「どれも提供者側の自己満足に終わっているケースがほとんどであるのが、小職の現状認識です。」との事、全くその通りだと思います。そうでなくするにはどうすれば良いのだろうか?という意識を持ち続けて一つ一つのプロジェクトに携わっていくというのが現在の状況ですね。

    きっとそのうちコラボする機会ができるでしょう。楽しみにしています。

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  5. 教えていただいたサイト(http://www.atmarkit.co.jp/fitbiz/serial/xp/01/01.html)を拝見しましたら、私の言うユーザ・エクスペリエンスと殆ど同義でしたが、新規のビジネスに係わる部分に特化されておられるようです。
    「新しいソリューションの提案」と言い換えてもいいです。サービス提供の方法論や人とモノの係わりを変える、という意味ではエクスペリエンスであり間違いはない(寧ろ王道)のですが、もう少し丹念なモノ作りの部分・・例えば、ユーザの使用実態に合わせて、出来の悪いシステムの一部を改良するとか、或いはそうならないように始めから作るとか・・そういった事もエクスペリエンス・デザインとして重要な側面ではないかと考えます。前者も後者も「広義なユーザビリティ」を問題にする、ともいえます。

    話はそれますが、一昔前にペーパーレス(紙を無くす)という言葉が流行りましたが、紙を大量に消費する時代には、この概念はまさにエクスペリエンスに着目したブレークスルーであったと言えると思います。その後、やはり紙は手放せないことが分かり、レスペーパー(できるだけ少ない紙で)だなどと巧みに方便化されました。最近では、レスペーパーストックではないか、などと言われていると思います。(*この辺のところは是非sudaさんのご見解をお聞きしたいです^^) 意訳すると、情報共有のために必要であればどんどん紙をコピーしても良いけど保管は極力少なくしてね・・ということでしょう。一定の時間が経過すると画像が消えるコピーとか履歴管理をユビキタスに行うなど、オフィスワーカーの生態や紙の使用実態について考察すると、こんなエクスペリエンスの解もあり得る、と思います。

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  6. 松原さん;  コメント有難うございます!
    ワークプレイスをやっていると、どうしても「レスペーパーストック」を推さなくてはなりませんが、エクスペリエンス観点からいうと、どれをストックするかなどソートする事自体面倒くさいです。会議の資料を印刷して配ると、1.ページ数が多いほうが仕事をしているように見える。2.話をちゃんと聞いています、と視覚的に見せるように配った紙にほとんどの人がメモを取る、等のことがおこります。メモを取ると、その紙に価値ができるので、結局とっておきます。「レスペーパーストック」にするには、参考資料の印刷をしないことから始まるのでは?

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  7. あっ!いい点を突きましたねぇ~^^
    どこかで・・『できるサラリーマン』のようなコラムを見たような気がします。sudaさんの指摘1など、処世術のようなできるフリは良く見かける風景ですね。

    私はかなり前ですが、できるプレゼンと発表資料の関係をリサーチしたことがあります。といっても、某社でプレゼンの度に資料枚数をカウントしたんですけど。で結果は、分かりやすいプレゼンというものはppt一枚につき3分が目安であることが分かりました。15分プレゼンで5枚ということですね。量が多くなるほど端折ったり早口になったりするので、比例して分かりにくくなります。3分以上かけると冗長ですし。3分はほど良い長さのようです。時々10分のプレゼンに30枚位使用する豪傑が居ますが、聞いている方はフラストレーションが溜まります。作る枚数が少なければ印刷枚数も少なくなるのに・・ 印刷枚数をすくなくするためには、帰納的に考えるとドキュメンテーション能力・コミュニケーション能力が大事ということになりますね。

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