ここ3年間ぐらい研究所の場創りについて何度か関わった。元々科学に興味があったり、世界を変えてきた科学者達に畏敬を抱くと同時に尊敬してしている。ここ一年程で読んで満足した本の中、科学の発見に貢献した人達のドロ臭い話が得に好きだ。G.シャピロの「創造的発見と偶然:科学におけるセレンディピティー」、Dava SobelのGalileo’s Daughterでは、きれいに纏められた成功ストーリーではなくて、非凡と平凡の境目である発想を全く変えてみるということと、現場で自分で実験するという場面がよく分かる。
今日一年前に読んだ中村修二の「考える力、やり抜く力:私の方法」を読み返した。ここでも発想を全く変えるという事と、自分で実験するということが非常に印象的だ。でも、それ以上に、自分の使命である研究を何よりも優先させてひたすら研究に打ち込んだということが熱く語られている。これは集中力のある科学者達にはあたりまえかもしれないが、中村氏の本でも言われているよう、企業の研究所では相当な心構えがいる。企業では、業者との付き合い、過去のフォローも対応しなくてはならない。大体のケースは、それで時間を大幅に取られていて、実際に研究に使う時間は少ない。
研究所の場創り。本当に信念を持ってやりたい研究があれば、中村氏のように自分でやりたいようにやるのだと思う。企業の大きさは関係なく、プレッシャーは誰にでも同じなのではないだろうか。特に科学だから、成功して何か発見したり、発明したりできる可能性はごく低い。また、大学の研究所と、企業の研究所は期待も求められる成果も違う。そんな研究所の場創りでできることは何か。とにかく研究者が必要に応じてどのようにでも変えることにできる、フレキシビリティーの高い場にするしかないと思う。いくらフレキシビリティが高くても、研究には全く新しい機械や、セッティングがつき物だ。それには研究者が自分でつくるか、何か必要な際に即対応してくれるマシンショップを用意するかだ。