今まである程度の数のワークプレイス作りプロジェクトに携わってきた。その間、あらゆる分野で素晴らしい成果を挙げてきた方々の伝記もどんどん読んだ。そこで最近本当に分かった。何事も、最終決定権を持っているリーダーが働く環境作りのリーダーで無い限り、本物の場作りはできないのだ。スポーツのコーチ、企業の社長、市長、学長。何か成果を成し遂げたい時には、目標がある。目標はリーダーの強い思いだ。その目標を達成するためには、ハードではヒト、カネ、モノが必要で、ソフトでは人が取り扱う情報と知識をハードなものに変えるための時間、プロセス、場が必要だ。リーダーはそれらの本質を理解し、これら全ての項目をどのようにして使うか根本的に理解していなければならない。本物の場作りは、どのようにして場を使うかということを理解していればできる。今多くの企業がやっているようなものは、残念ながら本物の場作りとはいえないと思う。
私が読んできた場作りの本質を理解しているリーダーたちについては、例えばPeter DruckerのThe Adventure of Bystander、Howard SchultzのPour Your Heart Into It、元ニューヨーク市長Rudolf GiulianiのLeadership、Richard FeynmanのSurely You’re Joking Mr. Feynman、John Nashの伝記A Beautiful Mind、トム・ケリーの『発想する会社!』等の中で、ハッとするような場作りについて当たり前のことが書かれている。
残念なことに、私の携わってきたワークプレイス作りのプロジェクトで、企業トップがみずからリーダーとして場作りに携わったケースは無かった。リーダーがある程度理解と支援をしてくれたケースでは成功と呼ばれるような成果を出せたものもあるが、それもやはり目標達成のため必要な項目として根本的に考えていたものではなかった。これは、私が今まで企業のトップと話をすることに力を入れていなかったからだと思う。もちろん現場は重要だ。でも本物の場作りをするためには、企業トップと直接話をするしかない。どの時代にも全体図を本当に理解しているトップは少ないものだ。だが、意味のある場作りには、その数少ないトップに出会えるようなしくみを作っていくしかないようだ。